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彼女の福音

肆拾伍 ― 天才少女の同窓会 ―

 

 ことみ。

 ひらがなみっつでことみ。英語だと、アルファベット六つでKOTOMI。エスペラント語でもやっぱりアルファベート六つでKOTOMI。呼ぶ時はことみちゃん。

 今日はとっても嬉しいの。久しぶりに日本に戻ったら、杏ちゃんが同窓会にご招待してくれたの。だから、お礼にバイオリンを

「ストップ」

 杏ちゃんが右手でストップサインをしたの。杏ちゃんも右利きなの。右利きの人は左利きの人よりもいっぱいるけど、何でそうなのかはよくわからないの。右利きか左利きかを判定するには、普通はどっちの手で字を書くのかで決めていたけど、それは

「無駄なうんちくも語らない」

「ダメ出しをされちゃったの。ちょっとがっかり」

「こっちは一般常識で対応してるんだから、がっかりしないでほしいわよ」

「なんでやね〜ん」

「それはこっちのセリフよっ!!」

 杏ちゃんが怖い顔をしたの。杏ちゃん、いじめっこ。

「……もう、まともに取り合うのはやめよ……」

 はぁあ、とため息。

「元気がないみたいなの。だからここは私のバイオリンで」

「やめて!そんなことをしたらとどめを刺されて死んじゃうわ、あたし」

 何だかとっても失礼なの。

 

 

 

 

 今年の同窓会は、私の学年のみんながお呼ばれされたの。あまり知ってる人は多くないけど、朋也くんと春原くん、椋ちゃんもいるから、寂しくないの。特に、杏ちゃんが席のアレンジをしてくれたおかげで、春原くんと朋也くんの隣に座ることになったの。

「というわけで、ここで一発芸なの」

「まさか地獄のバイオリンとかじゃないよね……」

「春原くん、はい」

 差し出された手を、春原くんがじっと見つめたの。

「ええと、これ、何?」

「ん?そこ、何やってんの?」

 杏ちゃんも興味がありそうな顔でこっちを見てきたの。ちょうどいいの、私が飛行機の上で必死になって編み出したギャグをお見舞いして、同窓会はどっかんどっかんなの。

「あ、ああ、握手ね。はい」

「春原くん」

「はい?」

 握り返してくれた手を指差して、私は言った。

「握手サバイバル」

 ……

 …………

 ……………………ぷっ

 ぷーくすくすくすくすくすくすくす

「ギャグ、なの?ねえ?」

「そんなの僕に聞かれても……」

 イマイチ反応が良くなかったの。残念。だから、今度は私の秘蔵のとっておきをお見舞いするの。これを使うと、いっぱいいっぱい笑っちゃって、お腹が痛くなってお医者さんを呼ばなきゃいけなくなるかもしれないから、あまり使いたくなかったの。でも、このままじゃ私、売れないお笑い芸人さんみたいに見られちゃうの。

「いや、芸人とかいう前に、お前学者な」

「芸人さんもいっぱい、い〜っぱいお勉強するの。だから私も、アメリカにいる時はいっぱいお笑いのお勉強をしたの」

「普通に物理の勉強しろよ」

「では、ことみちゃんの究極奥義をお見舞いするの」

 すぅ、と私は息を吸い込んだの。じっと固唾をみんなが呑んだの。いつの間にか同窓会のみんなが私を見ているの。ちょっとどきどき。

「……」

「…………」

「…………」

「ウェルカム腕噛むどこ噛むねんっ!!」

 ……

 …………

 ………………………………ぷっ

 ぷふーっくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす

「ギャグなのよねっ?!」

「泣かないでよ……」

 くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす

「……ことみちゃん、まだ笑ってますね……(これだから脳内お花畑な天才ボケは……)」

「い、今、何か言いましたかアナタ?」

「え、何のことですか、春原君?」

「な、何でもないっす……」

 くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす

「というか、もうそろそろ止めた方がいいんじゃないか?」

「そうね。ことみ、ストップ。そんなに笑い続けると、ここにいるバカみたいになっちゃうわよ」

「杏、岡崎にそれはないだろ?」

「普通にあんたのことよ」

「自分の彼氏にそれはないっすよねっ?!」

 くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす

「ことみちゃん?ことみちゃん?返事をしないと麻酔剤を注射ですよ?」

「こわっ!椋ちゃんこわっ!」

「しょうがないわねぇ……朋也、あれやって」

「あれ?」

 くすくすくすくすくすくすくすくすくすくす

 

「おーい、ことみちゃん」

 

「朋也くん、杏ちゃん、椋ちゃん、春原くん、こんにちは」

「……リセットされてる……」

 なぜかみんな盛大にため息をついたの。みんな、お疲れの様子なの。多分、それだけ笑ったってことなの。

「……もう少しだけ、夢を見させてあげようか」

「……ああ、そうだな」

「?」

 

 

 

 

「にしても、随分とまぁ変わるもんだねぇ」

 春原くんが周りを見回しながらそう言ったの。

「ああ、そうだな。誰が誰だか、ちょっとわかりづらいよな」

「大丈夫よ、朋也。あんたのその陰険そうな不良面は、ちょっと忘れられないから」

「言ってろ」

「そうそう。みんなに覚えてもらえるいい顔ってのは、この僕、ベビー春原のような顔のことさっ」

「誰だお前は」

「あんた普段から顔合わせてますよねぇっ!!」

「あ〜思い出した。杏のペットの」

「名前は陽平。超プリチーでしょ」

「超ブザイクだなっ!」

「ブザイクじゃないよっ!ぷりちーって呼ばれてもこれっぽっちもうれしくなんかないよっ!っていうか、僕、杏のペットなんかじゃないよっ!!」

 くわっ、と春原くんが顔を引きつらせたの。それを指差して、朋也くんが私に言ったの。

「ことみ、よく見ていろ。この顔こそがこいつに芸人としてのアイデンティティーを与えてるんだぜ」

「わかったの。これが春原くんの持ちネタなの」

「いや、違うぞことみ。こいつはな、存在自体がネタなんだ」

「岡崎さっきから失礼すぎやしませんかねぇっ?!!」

「あの……ちょっと静かにした方が」

 椋ちゃんが不意に、あんまり楽しそうじゃない声で言ったの。

「あ、悪い。悪ノリしちまったかな」

「い、いえ……その……」

 椋ちゃんの視線を追って、私たちは同窓会場の一角を見たの。そこでは、女の人たちが私たちを見て意地悪そうに笑っていたの。

「あれは……」

 杏ちゃんが冷たい声を出したの。

「え?杏の知ってる人?」

「ん。まあね。うちのクラスの女子グループ。あの真ん中にいる奴いるでしょ?ほら、今こっち見た」

「あ、あれね。うわぁ、あの人、僕たちと同じ年齢なんだ」

 失礼な話だけど、春原くんの言うとおりだったの。杏ちゃんが忌々しそうに見ている女の人は、杏ちゃんや椋ちゃんよりももっともっと上の学年の人に見えたの。

「あの福原って人ね、前、あたしに絡んできたのよねぇ。あんたたちも気をつけなさいよ」

「いじめる?いじめる?」

「お姉ちゃん、けんかしたらだめだよ」

「だってしょうがないじゃない、一方的に絡んできたんだから」

「……へぇ。杏に、ね」

 春原くんの声が、ちょっと怖くなったの。そしてそのまま春原くんは立ち上がろうとしたんだけど、杏ちゃんに袖をひっぱられたの。

「座ってなさい」

「何だよ。ちょっと話してくるだけだからさ」

「あんなのに構ってたら、時間がもったいないわよ……そりゃ、嬉しいけどね……」

「……ちっ、わかったよ」

 最後はちょっと赤くなった杏ちゃんを見て、春原くんは舌打ちをしたの。何だか、みんなちょっと怖いの。

「あーっ、もう、気分台無し。というわけで飲むわよっ!」

 杏ちゃんが私のグラスになみなみとビールを注いだの。

「……こんなに飲めないの」

「いいのよこれぐらい、何でもないんだから。知ってる?お酒に酔った時こそ、お笑いのネタって浮かぶものよ」

「ほんと?」

 だったら、飲むの。

「お、おい、ことみ、そんなに一気に飲まんでも……」

「いーのいーの。ほら、朋也もぐぐっと」

 杏ちゃんが朋也くんのコップにもビールをなみなみと注いだの。負けないの。

 

 

 

 

「あははははははははは〜」

 杏ちゃんの笑い声がちょっと頭に響くの。

「よ〜へ〜、ちゃんとのんでる〜?」

「飲んでるよ……杏は……って聞くまでもないね」

「きょ〜じゃなくて〜、きょ〜ちゃんってよんで〜」

「は?何でまた」

「いいじゃないのよ〜。それとも、よ〜へ〜はいや?」

「いや、嫌ってわけじゃないけど……さすがに飲みすぎでしょ、杏」

「……」

「ねぇ杏、おい、杏ってば」

「……」

「……杏ちゃん」

「な〜にっ、よ〜へ〜」

 春原くんがため息をついたの。そんな春原くんのお膝に、杏ちゃんが頭を乗せたの。とっても甘えんぼなの。

「えへへ〜、ひざまくら〜」

「……ねぇ、椋ちゃんも何か言ってよ」

「何か言って聞くようなお姉ちゃんだと思いますか?」

「……思いません」

「そもそもレアなシチュなんじゃないですか、お姉ちゃんが甘えてくれるなんて。いつもは辞書投擲の練習台がお似合いの春原君に」

「あんたも随分失礼っすよねっ!?」

「この際いっそヤっちゃったらどうですか、春原君。お姉ちゃんのいつもとのギャップに鼻息荒くしたりエロい妄想にふけったりしながら」

「何か嫌っす」

「『何だいつもこうしおらしけりゃもっといいけどまあいいやこれから未青年にはちょっと見せられない行為に勤しむとしようウエヘヘヘヘヘヘ』」

「それって僕すごい変態さんですよねぇっ?!!」

 すると、杏ちゃんが「えい」と掛け声を出しながら春原くんのお膝をつねったの。

「よ〜へ〜、あんた、りょ〜にてをだしたら、だめなんだからね〜」

「出さないよ……はぁ」

「あんたには、あたしがいるんだから〜。うわきはだめよ〜」

「してないって。ああくそ、ムカつくんだか萌えるんだか、よくわかんなくなってきちゃったよっ」

 杏ちゃんと春原くん、とってもラブラブなの。だから、何だか羨ましくなってきちゃったの。

「というわけで、えいっ!なの」

「というわけで俺に抱きつくな」

「……朋也くん、いじめっこ?」

 昔はこんなに冷たくなかった気がしたの。時の流れは無情なの。

「い、いやいじめっことかそういうのじゃなくてだな、ほら、俺結婚してるし……」

「?」

「だ、だから胸が触って……」

「ムネガサワッテルムネガさんがいるの?お久しぶりなの」

「だからそんな奴初めからいないって!!」

 その時、朋也くんの携帯が鳴ったの。びくんと体を震わせる朋也くん。

「も、もしもし」

 朋也くんの精一杯嬉しそうな声とは対照的に、冷たく低い声が携帯電話から聞こえてきたの。

『……朋也か』

「あ、ああ。その声は俺の大好きな智代だなどうしたそんな暗い声でそっちの方は終わったのか」

 すごい勢いでまくしたてる朋也くんだったけど、その必要はなかったの。結構間があってから智代ちゃんが答えたの。

『……まだこっちは終わりそうにない。それより朋也、よもやとは思うが私以外の女とじゃれついていたりしないよな』

「してないしてないしてないしてないしてないしてないしてないしてない」

 どばどばっ、という音が聞こえそうな勢いで、朋也くんが汗を流しながら智代ちゃんに答えたの。でも、智代ちゃんの声にはまだとげが残っていて、もしここにいたら「ジロ」って音が聞こえそうな感じで朋也くんを睨んでると思うの。

『本当に?』

「本当に本当、100%マジ。俺は天真正銘ともぴょんラブ智代一筋だ―っ!!」

 最後の方はシャウトに近かったから、みんながこっちを見てたの。ちょっと恥ずかしかったの。

『そんな恥ずかしいことを大きな声で言うなぁっ!!』

 返ってきたのも、大きな声だったの。智代ちゃんも結構動転してるの。

「悪い悪い。とにかくだ、うん」

『まったく、朋也は仕方のない奴なんだから』

「とにかく、俺が浮気なんてするはずないじゃないか。俺たちの愛は永遠だろ」

『……うん、すまなかったな、疑ったりなんかして』

「気にするなよ。愛してるぜ、はにぃ」

『私もだ、だぁりん』

 そして会話が途切れたの。そして朋也くんはにやけ顔でため息をつくと、椋ちゃんと春原くんと私の視線に気づいたの

「……何だよ」

「別に何でも?ラブラブでよかったですねぇ……はにぃ(笑)」

「そこで(笑)を入れるなよ」

「だぁりん(プゲラ)」

「プゲラもいらない」

「いや〜、岡崎もらぶらぶ〜なんつって」

 春原くんがそう笑ったけど、春原くんもそんなに他人のこと言えないの。だって

「じゃ〜、あたしたちもらぶらぶ〜」

「いや、いいよっ!っていうか、時と場所を考えましょうよねぇあんたっ!!」

「うぅ……よ〜へ〜が怒鳴ったぁ……」

「あ……ゴメン」

「うぇ……ひっく……えぐっひっくひっく……」

 驚いたの。あの杏ちゃんがしゃくり上げ始めたの。慌てる春原くんの後ろに、椋ちゃんが立ったの。

「春原君」

「あ、いや、これは違うんだよ椋ちゃん、そんないじめてたとかそういうのじゃなくて」

「理由がどうであれ、お姉ちゃんを泣かせたりなんかしたら」

「……なんかしたら?」

 にやり、と椋ちゃんが不気味に笑ったの。体からどす黒いオーラが放出されてるの。とってもとっても怖いの。

「お父さんに一言言っておきますからね。お父さん、悲しむだろうなぁ……やっぱり怒りますよねぇ……」

 ふふふ、と笑う椋ちゃんに、春原くんは何も言えずにただただ頭をカクカクと上下に揺らしただけだったの。

 

 

 

 

「……というわけで、一次会はここでお開きにしたいと思います。皆さん、お疲れ様でした」

 いいんちょーおつかれー、とか、いいんちょーもにじかいいこーぜー、とかいう声が椋ちゃんにかけられたの。本当は杏ちゃんが閉会の挨拶をするはずだったけど、杏ちゃんは春原くんに寄りかかっていて、ちょっと無理っぽかったの。

「けっ、いざとなったら使えない馬鹿姉なんだから」

「……椋ちゃんいじめっ子?」

「え?今私何か言いました?」

 そうこうするうちに、みんなが立ち上がり始めたの。朋也くんも携帯を取り出してメールを打った後、私たちに笑って言ったの。

「あ、悪い。俺、これから智代と合流するわ。じゃあな」

「あ、はい。岡崎君、また今度です」

「おう」

「朋也くん、またね、なの」

 そう言って私は朋也くんに抱きついたの。アメリカでは、お別れの挨拶としては普通なの。

 

 ぶちっ

 

 

 どこかでそんな音が聞こえたかと思うと、朋也くんの携帯がさっきよりもうるさそうに鳴ったの。青い顔で朋也くんが出るの。

「あ、もしもし。ああ、俺。うん、今そっち行く……だから浮気してないって……だから、俺には智代しかいないってっ!!」

「岡崎、僕を見捨てずに助けてくれよっ!!」

「あばよ春原、そっちも武運を祈るっ!!」

 そう言って無情にも朋也くんは春原くんを置いて行ってしまったの。

「あれ〜、ともやは〜」

「今帰ったよ。っていうか杏……じゃなくて、杏ちゃん、僕らももうそろそろ出なきゃ」

「え〜、へ〜かいのあいさつしなきゃ〜」

「それはもう椋ちゃんがやったからさ。ほら」

 杏ちゃんを立たせると、春原くんは肩を貸してあげたの。ちょっとカッコよかったの。

「あ、ごめん、ちょっと僕トイレ。椋ちゃん、ちょっと杏頼んでいい?」

「はいはい。待ってますね」

 会場だった料亭の入り口近くで、春原くんはそう言うと引き返して行ったの。しばらくしてから、女の人たちの笑い声が聞こえてきたの。

「あら?」

「あ」

 その笑っていた人たちは私たちを見ると、にやっと笑ったの。ちょっと失礼な感じなの。よく見たら、さっきの福原さんと、そのお友達だったの。

「……」

「……」

 福原さんはにやにや笑いながら椋ちゃんと杏ちゃんを見ながら出て行ってしまったの。

「何だか意地悪な感じだったの」

「べ〜だ」

「そうですね……気にしないであげて下さい。フケ顔バーサンが嫉妬してるだけですから」

「?」

 あはは、と椋ちゃんが笑うと、それよりも野太い声が奥から響いてきたの。その声にびくんと反応する杏ちゃん。一瞬でお酒が抜けたみたいだったの。

「あっはっはっは……っと。おっと」

「へっ、これはこれは」

 何だかさっきよりも意地悪そうな人たちが三人、歩いてきたの。杏ちゃんの目がすっと細まったの。

「……あんたたち、今、何かやった?」

 底冷えするような声で杏ちゃんが言ったの。

「何言ってんだよ、何もしてねえよ」

「自信過剰になってんじゃねえよ。だいたい、何するんだよ、元委員長さんよ」

「ぎゃははは、こいつまだクラス委員気取りなわけ?笑える」

 これ見よがしに杏ちゃんにぶつかって男の人たちは通り過ぎたの。

「けっ、出入り口でぼさっとしてんじゃねえよ。邪魔だろうが」

 出て行く時に、一人が吐き捨てるように言ったの。とっても、とっても感じが悪かったの。

「今の、いじめっこ?」

「お姉ちゃん、今のってサッカー部の……」

「……っ」

 椋ちゃんが言い終える前に、杏ちゃんが歩き出したの。そしてそれは駆け足になったから、私と椋ちゃんは取り残されちゃったの。

「追いますよ、ことみちゃん」

「うん」

 杏ちゃんに追いつくのは簡単だったの。杏ちゃんは、トイレの傍の廊下で壁に寄り掛かっている春原くんの傍にいたの。

「ねぇ?大丈夫?何かやられてない?」

「大丈夫だって。怪我なんてしてないよ」

「ほんと?ねぇ、あいつら、サッカー部のOBでしょ?何の用だったの?」

「だから何でもないよ。ほんと、大丈夫。無事だよ、御覧の通り」

 春原くんが笑うと、杏ちゃんも困ったように笑ったの。それを見て、私と椋ちゃんも安堵のため息をついたの。

「飲みなおそっか」

「いいわね。そうしましょっと。椋、ことみ、付き合う?」

 もちろん私も椋ちゃんも頷いたの。そして春原くんが歩き出して、杏ちゃんがその腕に絡みついて、そんな二人を見て私もほのぼのと笑ったの。

 

 とっても、とってもお似合いさんだったの。

 

 

 

 

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